クラウド時代のヘルスケアモニタリングシステム構築と応用

発行:(株)シーエムシー出版  

77,760円

  • 全て税込み表示です
小計
円 (税込)

内容紹介

刊行にあたって


 1975年頃から芽生えたメカトロニクス技術は、機械・電気・情報を3本柱として、旧来の機械システムを高能率・高精度・高信頼のシステムへと変貌させた。工作機械はもとより、プリンタ・磁気ディスク・光ディスク・VHS・CD・DVD・携帯電話などにみられるように、印刷・記憶・伝達などの情報機器に革命をもたらした。
 家電・自動車から各種部品に至るまで、日本発のメカトロニクス技術は、それらの部品・装置・システムまでも世界のトップに押し上げ、1990年代にはジャパンアズナンバーワンと称されるほどの原動力となったと言っても過言ではない。
 あらゆる機械システムにはセンサとマイクロコンピュータが埋め込まれて、無駄な動きが排除されて最適制御されエネルギー消費をミニマムにするなど小型軽量化・経済化を達成し、しかも高い信頼性を得て、日本製品は世界一の競争力を持つに至ったのである。このような基幹技術をベースとして、日本はここ20年ほど輸出黒字を毎年10兆円計上し、今や270兆円の海外純資産と1400兆円の個人資産を有する世界一の金持ち国となった。
 しかしながら、国民がそのような豊かさを実感するに至らないのはなぜか。毎年稼ぐ巨額のマネーが金融システム等に貯蓄されていて、国民生活を直接潤す構造にはなっていないことが大きな理由である。さらにはGDP(国内総生産)の伸びが2%以下の状態では失業率5%を減らすことができない。このような状況を打開する道として、今後はセンサネットワークの対象を前述の機械システムのみから人間・社会システムまで拡張して、人にやさしい人間・社会システムを創ることが考えられる。
 幸か不幸か日本は少子高齢化の先頭を走っている。そこで第3次産業を超えて、互いに助け合う社会を創出する産業すなわち第4次産業の育成を目指すことにより、日本は近い将来、産業の空洞化を乗り越えられるものと考えている。
 筆者が1991年から20年提唱してきたネイチャーインタフェイスの世界とは、マイクロセンサとインターネットを用いて、人間・人工物・地球(自然)の3項のインタフェイス(界面)を低くして、発信される万物の情報の交流を可能にする調和的な世界である。人工物にセンサやマイコンを内蔵して、エネルギー消費の最適化を実現するスマートグリッドなどによる分散ネットワーク化、故障予知の技術による安全なインフラシステムの構築の基盤となる世界である。人間自身もセンサとインターネットを使うと、心拍・呼吸・動き・体温等の生体情報を得て、言語以上により親密で精確な情報交流が可能となる。無医村の過疎地や一人暮らしの老人のケア、個々の人間のストレスの予知や緩和、あるいは個々の人間の集合体としての社会がいま何を考えどう行動しようとしているか察知するなど、新たな人間情報センシングサービスの実現へとつながるものである。このような強靭なインフラと分散化したインフラおよび人間情報にもとづくソフトウエアによって姿を現してくる世界、それがネイチャーインタフェイスの世界である。
 2000年に設立したNPO法人ウェアアラブ環境情報ネット推進機構(WIN)では上記の一般論を具体化する活動を続けている。すなわち、2002年~2004年度にIPA(独立行政法人情報処理推進機構)の次世代ソフトウェア開発事業において採択され、東京大学医学部矢作教授をプロジェクトリーダーとして研究した「ウェアラブルセンサを用いた健康情報システム」である。
 本システム構想の最大の特徴は、医師が患者の状態を判断するベースとなるさまざまな生体情報を、リアルタイムで自動的にモニタリングし続けるという点である。WINがこの構想のために開発したのは、まず生体情報をとるためのセンサ、取得されたデータを統合し、グラフなどのような使いやすい情報に置き換えるプログラム、そして、それらを医師や介護担当者など必要な人がみられるようなシステムと、大きく3つに分けられる。
 これまでには数々の生体センサが発案され、まさに頭の先から足の先まで、皮膚温度や脈拍はもちろんのこと、脳波から眼球の運動、体動加速度、血流量、足圧まで、全身の生体情報を計測してきたが、それらは実社会のなかにどのように組み込まれ、実際にどのように役立てられていくかを検証した。
 現在、NPO法人WINの「バイタルケアネットワークシステム構想」は、新たな局面に入りつつある。これまで発案されたさまざまな生体センサは、プロトタイプづくりを終え、すでに医療関係者を交えた実証実験も第1段階は終了したといえる。今後はこれらの実験結果をもとに、より有用なものを選別し、方向付けを明確に行いながら具体化・実用化を進め、実社会のなかでこのシステムを使用していくためのソフトウェア開発に注力していくことになる。
 高齢者や慢性疾患を抱える人など、倒れる危険性のある人の脈拍,血圧,呼吸,酸素飽和量などを指輪型のパルスオキシメータや腕時計型の複合生体センサシステムなどを使ってモニタし、通信網を使って採取した情報を統括するセンターへ送信する。また、認知症高齢者の眼球運動などのバイタルサインをモニタリングすることによって、認知症の進展具合を診断し、アルツハイマー型痴呆の早期発見に役立てる。さらに、常に健康状態をチェックする健康管理システムとして実装すれば、医師やコンサルタントの指示によって生活習慣を改善し、疾病予防に役立てることも可能となる。
 環境センサネットワークサービスや、健康支援サービスなど、固定型環境センサ、固定型医療機器などの各種センサからの情報をもとにクラウド・コンピューティング技術と組み合わされ、いままで周辺機器への一方通行だった情報が、逆に固定のセンサから情報ネットへとあらたなサービスが展開されるようになった。
 つまり携帯サービスは、固定された装置でセンシングした情報をユーザの持つ携帯電話、特にスマートフォンへと情報を発信したり、周辺機器を制御したりするサービスから進化して、万物が発信する情報をセンサがスマートフォン自体を介して情報をクラウドに送り、ユーザにサービスを享受する新たなサービスが生まれる時代に入ってきた。すなわち、センサ自体もマイクロ化することによりモビリティを持つことが可能となり、万物からの情報発信とクラウドを通しての情報受信を同一のスマートフォンで行うことも可能となり、ユーザに個別適合されたサービスが、実現できる時代がやってきたのである。本書ではこれらの技術とサービスについて、最新の情報を掲載している。

2012年9月
板生 清

著者一覧
板生清   東京理科大学 教授;東京大学 名誉教授
伊藤寿浩  (独)産業技術総合研究所 集積マイクロシステム研究センター 副研究センター長
桑野博喜  東北大学 大学院工学研究科 ナノメカニクス専攻 教授
岡哲人   日立マクセルエナジー(株) マイクロ電池事業部 AS製品部 電池・回路設計グループ グループリーダー
片桐祥雅   (独)情報通信研究機構 脳情報通信融合研究センター 主任研究員
Lopez Guillaume  東京大学 大学院新領域創成科学研究科 人間環境学専攻 特任助教
梅田智広  奈良女子大学 社会連携センター 特任准教授
保坂寛   東京大学 大学院新領域創成科学研究科 教授
羅志偉   神戸大学 大学院システム情報学研究科 教授
源間信弘  (株)東芝 研究開発センター 首席技監
児島全克  HTC NIPPON(株) Product & Engineering Div. Director
池田泰久  NTTエレクトロニクス(株) BBシステム・デバイス事業本部 技師長
東野輝夫  大阪大学 大学院情報科学研究科 教授
山田純   クアルコムジャパン(株) 特別顧問
中嶋宏   オムロン(株) 技術本部 上級技術専門職
神谷昭勝  STマイクロエレクトロニクス(株) イメージング&アドバンスド製品部 ディレクター
Mariateresa Gatti  ST Microelectronics Advanced System Technology Director
山本隆一  東京大学 大学院情報学環 准教授
本橋健   日本電信電話(株) NTTソフトウェアイノベーション 主幹研究員
小林弘幸  順天堂大学 医学部 教授
板生研一  WINフロンティア(株) 代表取締役社長
雄山真弓  大阪大学 大学院基礎工学研究科 招聘教授;(株)カオテック研究所 代表取締役;関西学院大学 名誉教授
坪井俊明  NTTアイティ(株) ヘルスケア事業部 事業部長
吉田隆嘉  東京理科大学 客員教授
加納史朗  アズビルあんしんケアサポート(株) マーケティング部 マネージャー
石原亨   アズビル(株) 技術開発本部 商品開発部 システム商品グループ 技師
車谷浩一  (独)産業技術総合研究所 サービス工学研究センター 都市空間サービス基盤技術研究チーム長
大内一成  (株)東芝 研究開発センター インタラクティブメディアラボラトリー 研究主務
森正弥   楽天(株) 執行役員;楽天技術研究所長

商品詳細

発行元
日経BP社
発行日
2012年9月1日
ISBN
9784781306421
ページ数
313
サイズ
B5
原著者
発行:(株)シーエムシー出版